雪の宵 (中原中也)

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雪の宵

      青いソフトに降る雪は
      過ぎしその手か囁(ささや)きか  白秋



ホテルの屋根に降る雪は
過ぎしその手か、囁きか

  ふかふか煙突煙(けむ)吐いて、
  赤い火の粉も刎(は)ね上る。

今夜み空はまつ暗で、
暗い空から降る雪は……

  ほんに別れたあのをんな、
  いまごろどうしてゐるのやら。

ほんにわかれたあのをんな、
いまに帰つてくるのやら

  徐(しづ)かに私は酒のんで
  悔と悔とに身もそぞろ。

しづかにしづかに酒のんで
いとしおもひにそそらるる……

  ホテルの屋根に降る雪は
  過ぎしその手か、囁きか

ふかふか煙突煙吐いて
赤い火の粉も刎ね上る。

2009/2/6

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