わが喫煙 (中原中也)

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わが喫煙

おまへのその、白い二本の脛(あし)が、
  夕暮、港の町の寒い夕暮、
によきによきと、ペエヴの上を歩むのだ。
  店々に灯がついて、灯がついて、
私がそれをみながら歩いてゐると、
  おまへが声をかけるのだ、
どつかにはひつて憩(やす)みませうよと。

そこで私は、橋や荷足(にたり)を見残しながら、
  レストオランに這入(はひ)るのだ――
わんわんいふ喧騒(どよもし)、むつとするスチーム、
  さても此処(ここ)は別世界。
そこで私は、時宜にも合はないおまへの陽気な顔を眺め、
  かなしく煙草を吹かすのだ、
一服、一服、吹かすのだ……

2009/3/16

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