山の上には雲が流れてゐた
あの山の上で、お弁当を食つたこともある……
女の子なぞといふものは
由来桜の花弁[はなびら]のやうに、
欣[よろこ]んで散りゆくものだ
近い過去も遠いい過去もおんなじこつた
近い過去はあんまりまざまざ顕現[けんげん]するし
遠いい過去はあんまりもう手が届かない
山の上に寝て、空を見るのも
此処[ここ]にゐて、あの山をみるのも
所詮[しょせん]は同じ、動くな動くな
あゝ、枯草を背に敷いて
やんわりぬくもつてゐることは
空の青が、少しく冷たくみえることは
煙草を喫ふなぞといふことは
世界的幸福である
[顕現(けんげん)]
・はっきりと現れること。明らかにあらわし示すこと。
2009/04/29
2011/2/4再録音