ゆめに、うつつに、まぼろしに……
見ゆるは、何ぞ、いつもいつも
心に纏[まと]ひて離れざるは、
いかなる愛、いかなる夢ぞ、
思ひ出でては懐かしく
心に沁[し]みて懐かしく
磯辺の雨や風や嵐が
にくらしうなる心は何ぞ
雨に、風に、嵐にあてず、
育てばや、めぐしき吾子よ、
育てばや、めぐしき吾子よ、
育てばや、あゝいかにせん
思ひ出でては懐かしく、
心に沁みて懐かしく、
吾子わが夢に入るほどは
いつもわが身のいたまるゝ
(一九三五・六・六)
[吾子(あこ)]
・我が子のこと。
[めぐしき]
・愛らしい。
2011/1/28