夜(よる)の海より僕(ぼか)唾(つば)吐いた
ポイ と音(おと)して唾(つば)とんでつた
瞬間(しばし)浪間に唾(つば)白かつたが
ぢきに忽[たちま]ち見えなくなつた
観音岬に燈台はひかり
ぐるりぐるりと射光(ひかり)は廻つた
僕はゆるりと星空見上げた
急に吾子(こども)が思ひ出された
さだめし無事には暮らしちやゐようが
凡[およ]そ理性の判ずる限りで
無事でゐるとは思つたけれど
それでゐてさへ気になつた
(一九三五・四・二四)
[出帆(しゅっぱん)]
・船が港を出ること。出港。
2011/1/28