十二月(しはす)の幻想 (中原中也)

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十二月(しはす)の幻想

ウー……と、警笛[けいてき]が鳴ります、ウウウー……と、
皆さん、これは何かの前兆です、皆さん!
吃度[きっと]何かが起こります、夜の明け方に。
吃度[きっと]何かゞ夜の明け方に、起こると僕は感じるのです

――いや、そんなことはあり得ない、決して。
そんなことはあり得ようわけがない。
それはもう、十分冷静に判断の付く所だ。
それはもう、実証的に云つてさうなんだ……。

ところで天地の間には、
人目に付かぬ条件があつて、
それを計上しない限りで、
諸君の意見は正しからうと、

一夜彗星[すいせい]が現れるやうに
天変地異は起ります
そして恋人や、親や、兄弟から、
君は、離れてしまふのです、君は、離れてしまふのです

     (一九三五・四・二三)

2009/04/03
2011/1/28再朗読

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