(一本の藁は畦の枯草の間に挟つて)

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(一本の藁は畦の枯草の間に挟つて)

一本の藁[わら]は畦[あぜ]の枯草の間に挟(ささ)つて
ひねもす陽を浴びぬくもつてゐた
ひねもす空吹く風の余勢に
時偶[ときたま]首上げあたりを見てゐた

私は刈田の堆藁(としやく)に凭(もた)れて
ひねもす空に凧[たこ]を揚げてた
ひねもす糸を繰り乍[なが]ら
空吹く風の音を聞いてた

空は青く冷たく青く
玻璃[はり]にも似たる冬景であつた
一本の煙草を点火するにも
沢山の良心を要することだつた

言葉の意味

[ひねもす]
・朝から夕まで。一日中。ひもすがら。

[堆藁(としゃく)]
・藁を丸く積み上げたもの。

[玻璃(はり)]
・仏教における七宝(しっぽう)の一つ。水晶のこと。
・ガラスの別称。

2009/04/29
2011/1/23再録音

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