月下の告白 (中原中也)

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月下の告白  青山二郎に

劃然[かくぜん]とした石の稜[りょう]
あばた面(づら)なる墓の石
蟲[むし]鳴く秋の此の夜さ一と夜
月の光に明るい墓場に
エヂプト遺蹟もなんのその
いとちんまりと落居[おちい]てござる
この僕は、生きながらへて
此の先何を為[な]すべきか
石に腰掛け考へたれど
とんと分らぬ、考へともない
足の許[もと]なる小石や砂の
月の光に一つ一つ
手にとるやうにみゆるをみれば
さてもなつかしいたはししたし
さてもなつかしいたはししたし

     (一九三四・一〇・二〇)

言葉の意味

[劃然(かくぜん)]
・はっきりと区別が付いている様子。

[ちんまり]
・小さくまとまっている様子。

1011/01/18

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