夏の午前よ、いちぢくの葉よ、
葉は、乾いてゐる、ねむげな色をして
風が吹くと揺れてゐる、
よはい枝をもつてゐる……
僕は睡らうか……
電線は空を走る
その電線からのやうに遠く蝉は鳴いてゐる
葉は乾いてゐる、
風が吹いてくると揺れてゐる、
葉は葉で揺れ、枝としても揺れてゐる
僕は睡らうか……
空はしづかに音く、
陽は雲の中に這入[はい]つてゐる、
電線は打つづいてゐる
蝉の声は遠くでしてゐる
懐しきものみな去ると。
(一九三三・一〇・八)
[音く]
・「青」や「暗」の誤植、間違いかもしれないようだ。ただしこの詩は「音」のイメージが籠められているため、判断は早急にしない方が賢明かも知れない。
2009/05/03
2011/1/11新録音