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夏の朝よ、蝉よ、 砂に照りつける陽よ…… 燃えてゐる空よ!
今日は誰も泳いでゐない、 赤痢[せきり]患者でもあつたんだらう? 海は空しく光つてゐる。――風よ……
叔父さんは僕にいふのだ 「早く持つたがいいぜ、 独り者が碌[ろく]なことを考へはせぬ。」
それどころか、……夏の朝よ、蝉よ、 むかふにみえる、海よ、 僕は寝ころびたいのだよ、
目をつむつて蝉が聞いてゐたい!――森の方……
(一九三三・八・一〇)
2011/1/7
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