雨と風 (中原中也)

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雨と風

雨の音のはげしきことよ
風吹けば ひとしほまさり
風やめばつと和みつつ

雨風のさわがしき音よ
――悲しみに呆[ほう]けし我に、
雨風のさわがしき音よ!

悲しみに呆けし我の
思ひ出はかそけきものよ
それに似て巷[ちまた]も家も
雨風にかすむでみえる

そがかすむ風情[ふぜい]の中に、
ちらと浮むわがありし日は
風の音に吹きけされつつ
雨の音と、我(あ)と、残るのよ

風雨

雨の音のはげしきことよ
風吹けばひとしほまさり
風やめば つと和みつつ

雨風のあわただしさよ、
――悲しみに呆[ほう]けし我に、
雨風のあわただし音(ね)よ

悲しみに呆けし我の
思ひ出のかそけきことよ
それににて巷[ちまた]も家も
雨風にかすみてみゆる

そがかすむ風情の中に、
ふと浮むわがありし日よ
風の音にうちまぎれつつ
ふとあざむわがありし日よ

注意

・同じノートに記されている、「風雨」が修正版と考えられる。

2009/05/01

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