毎日寒くてやりきれぬ。
瓦もしらけて物云はぬ。
小鳥も啼かないくせにして
犬なぞ啼きます風の中。
飛礫(つぶて)とびます往還[おうかん]は、
地面は乾いて艶[つや]もない。
自動車の、タイヤの色も寒々と
僕を追ひ越し走りゆく。
山もいたつて殺風景、
鈍色(にびいろ)の空にあつけらかん。
部屋に籠[こも]れば僕なぞは
愚痴つぽくなるばかりです。
かう寒くてはやりきれぬ。
お行儀のよい人々が、
笑はうとなんとかまはない
わめいて春を呼びませう………
一九三五、二
[飛礫(つぶて)]
・小石を投げること。また投げられた小石。ここでは、風で砂利などが飛ばされてくること。
[往還(おうかん)]
・行きと帰り。
・そこから、行き来する道のこと。
[鈍色(にびいろ)]
・薄墨色。濃い鼠色。
2009/03/21