彼女等が、どんな暮しをしてゐるか、
彼女等が、どんな心で生きてゐるか、
私は此の目でよく見たのです、
はつきりと、見て来たのです。
彼女等は、幸福ではない、
彼女等は、悲しんでゐる、
彼女等は、悲しんでゐるけれどその悲しみを
ごまかして、幸福さうに見せかけてゐる。
なかなか派手さうに事を行ひ、
なかなか気の利いた風にも立廻り、
楽観してゐるやうにさへみえるけれど、
或ひは、十分図太くくらゐは成れてゐるやうだけれど、
彼女等は、悲しんでゐる、
内心は、心配してゐる、
そして時に他の不幸を聞及びでもしようものなら、
「可哀相に」と云ひながら、大声を出して喜んだりするのです。
一九三五、六、六
2009/03/21