幼き恋の回顧 (中原中也)

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幼き恋の回顧

幼き恋は
燐寸[マッチ]の軸木
燃えてしまへば
あるまいものを

寐覚[ねざ]めの囁[ささや]きは
燃えた燐[りん]だつた
また燃える時が
ありませうか

アルコールのやうな夕暮れに
二人は再びあひました――
圧搾酸素[あっさくさんそ]でもてゝいる
恋とはどんなものですか
その実今は平凡ですが
たつたこなひだ燃えた日の
印象が二人を一緒に引きずつてます
何の方へです――
ソーセーヂが
紫色に腐れました――
多分「話の種」の方へでせう

2009/04/27

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