月 (中原中也)

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今宵月は荷(めうが)を食ひ過ぎてゐる
済製場(さいせいば)の屋根にブラ下つた琵琶(びは)は鳴るとしも想へぬ
石炭の匂ひがしたつて怖(おぢ)けるには及ばぬ
灌木がその個性を砥(と)いでゐる
姉妹は眠つた、母親は紅殻色(べんがらいろ)の格子を締めた!

さてベランダの上にだが
見れば銅貨が落ちてゐる、いやメダルなのかア
これは今日昼落とした文子さんのだ
明日はこれを届けてやらう
ポケットに入れたが気にかゝる、月は荷を食ひ過ぎてゐる
灌木がその個性を砥(と)いでゐる
姉妹は眠つた、母親は紅殻色の格子を締めた!

2009/02/13

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