早春の風 (中原中也)

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早春の風

  けふ一日(ひとひ)また金の風
 大きい風には銀の鈴
けふ一日また金の風

  女王の冠さながらに
 卓(たく)の前には腰を掛け
かびろき窓にむかひます

  外吹く風は金の風
 大きい風には銀の鈴
けふ一日また金の風

  枯草の音のかなしくて
 煙は空に身をすさび
日影たのしく身を嫋(なよ)ぶ

  鳶色(とびいろ)の土かをるれば
 物干竿は空に往き
登る坂道なごめども

  青き女(をみな)の顎(あぎと)かと
 岡に梢のとげとげし
今日一日また金の風……

2009/02/13

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