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石鹸箱(せつけんばこ)には秋風が吹き 郊外と、市街を限る路の上には 大原女(おほはらめ)が一人歩いてゐた
――彼は独身者(どくしんもの)であつた 彼は極度の近眼であつた 彼はよそゆきを普段に着てゐた 判屋奉公したこともあつた
今しも彼が湯屋から出て来る 薄日の射してる午後の三時 石鹸箱には風が吹き 郊外と、市街を限る路の上には 大原女が一人歩いてゐた
2009/03/12
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