あゝ 疲れた胸の裡(うち)を
桜色の 女が通る
女が通る。
夏の夜の水田(すいでん)の滓(おり)、
怨恨[えんこん]は気が遐(とほ)くなる
――盆地を繞(めぐ)る山は巡るか?
裸足(らそく)はやさしく 砂は底だ、
開いた瞳は おいてきぼりだ、
霧の夜空は 高くて黒い。
霧の夜空は高くて黒い、
親の慈愛はどうしやうもない
、
――疲れた胸の裡を 花瓣(くわべん)が通る。
疲れた胸の裡を 花瓣が通る
ときどき銅鑼(ごんぐ)が著物に触れて。
靄(もや)はきれいだけれども、暑い!
2009/02/15