丘の眩惑 (宮沢賢治)

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丘の眩惑

ひとかけづつきれいにひかりながら
そらから雪はしづんでくる
電(でん)しんばしらの影の藍青(インデイゴ)や
ぎらぎらの丘の照りかへし

  あすこの農夫の合羽(かつぱ)のはじが
  どこかの風に鋭く截[き]りとられて来たことは
  一千八百十年代(だい)の
  佐野喜の木版に相当する

野はらのはてはシベリヤの天末(まつ)
土耳古[トルコ]玉製玲瓏(ぎよくせいれいろう)のつぎ目も光り
    (お日さまは
     そらの遠くで白い火を
     どしどしお焚きなさいます)

笹の雪が
燃え落ちる 燃え落ちる

言葉の意味

[藍青(らんせい)]
・「藍青(インディゴ)」の青は正しくは異なる漢字を使用。インディゴは青色系統の染色色素。ジーンズなどもインディゴ染めである。賢治の頃、合成が可能となり、伝統的藍染めに打撃を喰らわす結果となったとか。

[佐野喜の木版]
・江戸時代に佐野屋喜兵衛が版元となって刊行したもので、一般に「佐野喜版」と呼ばれている。

[天末(てんまつ)]
・天の果ての意味。

[玲瓏(れいろう)]
・玉などが透き通って美しい様子。また玉などが美しい音を立てるさまを意味する。

2009/05/13

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