風景 (宮沢賢治)

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風景

雲はたよりないカルボン酸
さくらは咲いて日にひかり
また風が来てくさを吹けば
截られたたらの木もふるふ
 さつきはすなつちに廐肥(きうひ)をまぶし
   (いま青ガラスの模型の底になつてゐる)
ひばりのダムダム弾(だん)がいきなりそらに飛びだせば
  風は青い喪神をふき
  黄金の草 ゆするゆする
    雲はたよりないカルボン酸
    さくらが日に光るのはゐなか風(ふう)だ

       (一九二二、五、一二)

言葉の意味

[カルボン酸]
・[ウィキペディアより引用]カルボン酸(カルボンさん)とはカルボン酸構造 (R?COOH) を酸成分とする化合物である。カルボン酸構造の特性基の名称はカルボキシル基(親水性)であり、置換基としての総称はアシル基である。また、カルボン酸は有機酸あるいは英名でalkanoic acid(s)と呼ばれることもある。「カルボキシル酸」と記されることもある。アルコールと結合してエステル化する。

[廐肥(きゅうひ・うまやごえ)]
・家畜の糞尿、敷き藁などを腐らせて作った有機質に富む肥料のこと。堆肥(たいひ)。

[ダムダム弾]
・銃の弾の一種。

2010/5/18

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