小川が青く光つてゐるのは、
あれは、空の色を映してゐるからなんださうだ。
山の彼方[かなた]に、雲はたたずまひ、
山の端(は)は、あの永遠の目(ま)ばたきは、
却[かえつ]て一本(ひともと)の草花に語つてゐた。
一本(ひともと)の草花は、広い畑の中に、
咲いてゐた。――葡萄畑[ぶどうばたけ]の、
あの脣[くちびる]黒い老婆に眺めいらるるままに。
レールが青く光つてゐるのは、
あれは、空の色を映して青いんださうだ。
秋の日よ! 風よ!
僕は汽車に乗つて、富士の裾野をとほつてゐた。
(一九三三・一〇)
2011/1/11