涙語 (中原中也)

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涙語

まづいビフテキ
寒い夜
澱粉[でんぷん]過剰の胃にたいし
この明滅燈の分析的なこと!

あれあの星といふものは
地球と人との様により
新古[しんこ]自在に見えるもの

とほい昔の星だつて
いまの私になじめばよい

私の意志の尽きるまで
あれはあゝして待つてるつもり

私はそれをよく知つてるが
遂々[とうとう]のとこははむかつても
こゝのところを親しめば
神様への奉仕となるばかりの
愛でもがそこですまされるといふもの

この生活の肩掛[かたかけ]や
この生活の相談が
みんな私に叛[そむ]きます
なんと藁紙の熟考[じゅっこう]よ

私はそれを悲しみます
それでも明日は元気です

2009/04/30

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