おきなぐさ (宮沢賢治)

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おきなぐさ

風はそらを吹き
そのなごりは草をふく
おきなぐさ冠毛(くわんもう)の質直(しつぢき)
松とくるみは宙に立ち
  (どこのくるみの木にも
   いまみな金(きん)のあかごがぶらさがる)
ああ黒のしやつぽのかなしさ
おきなぐさのはなをのせれば
幾きれうかぶ光酸(くわうさん)の雲

     (一九二二、五、一七)

言葉の意味

[おきなぐさ]
・キンポウゲ科オキナグサ属の多年草で、山野の草地に植生して、全体が白色の長毛で覆われる。そのため、「翁草」と命名。春の季語。

[冠毛(かんもう)]
・植物の萼(がく)のかたちで、毛状となって風に飛ばされて種子を飛散させるもの。タンポポなどでお馴染み。

[質直(しっちょく)]
・じみで真面目であること。質朴(しつぼく)。

2010/5/18

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