雲の信号 (宮沢賢治)

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雲の信号

あゝいゝな せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし
山はぼんやり
岩頸(がんけい)だつて岩鐘(がんしよう)だつて
みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ
  そのとき雲の信号は
  もう青白い春の
  禁慾のそら高く掲(かか)げられてゐた
山はぼんやり
きつと四本杉には
今夜は雁もおりてくる

      (一九二二、五、一〇)

言葉の意味

[岩頸(がんけい)]
・火山岩頸。噴火の通路を満たして残されて出来た火成岩が、火山が浸食された結果、円柱状に露出したもの。

[岩鐘(がんしよう)]
・溶岩が釣鐘状に固まったものとされるらしい。

2010/5/7

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