有明 (宮沢賢治)

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有明

起伏の雪は
あかるい桃の漿(しる)をそそがれ
青ぞらにとけのこる月は
やさしく天に咽喉(のど)を鳴らし
もいちど散乱のひかりを呑む
  (波羅僧羯諦(ハラサムギヤテイ) 菩提(ボージユ) 薩婆訶(ソハカ))

     (一九二二、四、一三)

言葉の意味

[漿(こんず)]
・「濃水」の転じたもので、米を煮た汁。重湯。あるいは、酒や果汁などのおいしい飲み物。

[波羅僧羯諦菩提薩婆訶]
・般若心経の最後のほうに登場する言葉。「アーメン」のような唱え祈りの言葉で、「悟りの者に幸いあれ」くらいの意味。サンスクリット語で、「行け、行け、彼岸へと至らしめ、心理に目覚めよ」といった意味を、漢字の読みをサンスクリット語に当てはめて中国で漢字文章にされたものが、日本に伝わった。

2010/5/7

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