夏目漱石、三四郎9

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夏目漱石、三四郎9

紬(つむぎ)の羽織(はおり)

・「紬」は、綿を解いた木綿糸か、いびつな繭から紡いだ細い絹糸を、より(ひねり)をかけて強度の高い糸に仕上げて、これを用いて織った織物。丈夫なことから、もともと日常の衣服や作業着などに用いられ、外出用のおしゃれ着などにもなった。
・「羽織」は、室町時代頃に生まれた、長着(ながぎ・足首辺りまである丈の長い和服)や小袖の上にはおって着る外衣(がいい・外出用に上に着るもの)。

紋付(もんつき)

・家紋(かもん)を付けた礼装用の和服。紋服。
→紋付きの羽織は礼装用だが、紬はもともと礼装用に相応しくないと考えられていたため、三四郎は「安っぽい受付の気がする」のであった。

愛嬌(あいきょう)

・もともと「あいぎょう」といったものが、清音化(せいおんか)した。
・仕草や言動などが愛らしく、または可笑しく、そのために好ましく感じられること。
・相手を喜ばせるような振る舞い。サービス。

折襟(おりえり)

・ワイシャツみたいに襟が折り返されているやつをそう呼ぶのさ。

黒繻子(くろじゅす)

・黒色のしゅす織り。
・「繻子織・朱子織(しゅすおり)」とは、織物の基本的な織り方のひとつ。平織り、綾織り、しゅす織りを三原組織(さんげんそしき)と呼ぶ。経糸(たていと)と緯糸(よこいと)のどちらかが、布面に表れるようにした織り方。光沢があって、肌触りがよい。

ソップ

・オランダ語でスープのこと。

兵児帯(へこおび)

・鹿児島県(当時の薩摩)で15歳から25歳の間の男性を兵児と呼び、彼らが普段絞めていた帯が、明治維新と共に時流に乗って、男性用の帯の一つとなった。

雲母(うんも)=マイカ

・「きらら」「きら」とも呼ばれ、鉱物(ケイ酸塩鉱物)のグループ名。火成岩中に多く含まれ、薄く剥離しやすく、光沢がある。さらに伝導率が低いため絶縁体素材として使用される。
・だからといって「雲猫」と書いても「うんにゃ」とは発音しない。

十六武蔵(じゅうろくむさし)

・たった一人(1駒)の武蔵に対して、十六人(16駒)の敵が総掛かりで闘うという不条理なゲーム。それにもかかわらず16駒は二刀流の武蔵にばったばったと切り倒されるという、吉岡一門のなれの果てを思い知るような切ない?ゲーム。
・詳しくは、
[あそびをせんとや]というサイトの中にある
「十六武蔵」を見て下さい

アーク灯

・空気中でのアーク放電による発光を利用した照明のこと。 電極に炭素棒を用いて空気中で放電させる。弧光灯とも。単にアーク灯(arc lamp)と言った場合、普通炭素アーク灯のことを指す。
・主な発光体は高温となった炭素棒。放電により加熱され、白熱し強い光を発する。 炭素棒はアーク放電により先端部より消耗するので、発光を維持するには電極間の距離を調整する機構を要する。(ウィキペディアより部分引用)

酸水素吹管(さんすいそすいかん)

・水素と酸素を吹管(すいかん)から噴出点火すると、2800度もの高温になる。これを酸水素炎と呼び、金属素材の溶接・切断などに使用される。
[ライムライト]
・この炎の中に石灰を置くと、熱放射によって強い白色光を発する。これを証明として用いたのが、ライムライト(石灰灯、灰光灯)である。電灯の普及する前には劇場用のライトとして用いられたために、転じて「名声」という意味にもなった。

ジェームズ・クラーク・マクスウェル(1831-1879)

・イギリスの物理学者。古典電磁気学を確立し、電磁波の存在と、その伝播速度が光速と等しく、横波であることを論理的に証明した。名称は知られているが、そう簡単に説明できる人はそう居ない、マクスウェルの方程式でお馴染み?

ピョートル・ニコラエビッチ・レベデフ(1866-1912)

・ロシアの物理学者。1899年(1900年?)に電磁波の放射圧が存在するというマクスウェル理論を実験によって証明した。

浪漫派(ろまんは)

[ウィキペディアより部分抜粋]
・ロマン主義の底流に流れているものは、内面性の重視、感情の尊重、想像性の開放といった特性。ローマ帝国時代に知識層にはラテン語が広まったが、庶民の間では俗語としてロマンス語が広まった。そのロマンス語で書かれた文学作品が、ロマンスと呼ばれるようになり、ギリシャ・ローマの古典文学の対立概念とされるようになった。ロマン主義(ロマンティシズム)の語源は、ここにある。したがってロマン主義の「ロマン」とは、「ローマ帝国の(支配階級、知識階級ではなく)庶民の文化に端を発する」という意味である。

ギュスターヴ・クールベ(1819-1877)

・「こんにちはクールベさん」でお馴染みの画家。
・フランスのオルナンに生まれパリに上京して画家となった。運命の1855年パリ万博で、「オルナンの埋葬に関する歴史画」と「画家のアトリエー我がアトリエの内側、自らの7年に及ぶ芸術的生涯を語る現実的な寓意」という作品展示が却下されてしまった。当時の崇高ジャンルであり展示作品足るべき資質を備えるとされた「歴史画」「寓意画」のジャンルを茶化したからである。
・クールベさん本人は、茶化したつもりはない。もっと真剣だった。描かれるべき内容にヒエラルキーを設けて、迷盲に旧態を保持しようとするアカデミーの体質に対する憤りが、この時期の若手の画家達の間には燻っていた時代だ。怒れるクールベさん、博覧会のすぐ近くを借りて、自分の作品を展示してお客を集めてしまった。これが近代的な個展の始まりだとも言われている。「今の時代、目の前のもの」を描かなくてどないすんねん、というカタログに書かれた文章は、今日「レアリスム宣言」(写実主義宣言)と呼ばれている。
・まあなんちゅうか、1863年のエドゥアール・マネの「草上の昼食」の落選展出展の先輩に当たるような出来事が、このクールベ騒動なのである。

猖獗(しょうけつ)

・悪いこと・好ましくないことがはびこること。猛威を振るうこと。
・したがって原口さんはクールベさんに対してちょっと批判的である。

困却(こんきゃく)

・ほとほと困り果てること。

静粛(せいしゅく)

・静かにして慎んでいること。

愚劣(ぐれつ)

・愚かで劣っていること。

唐物屋(とうぶつや・からものや)

・中国の商品を扱っていた商人、商店。
・また、古道具屋のこと。

鷹揚(おうよう)

・鷹が悠然として飛ぶ姿から来ている。
・よって、「細かいことに捕らわれずゆったりと振る舞うこと」「穏やかで上品に振る舞うこと」といった意味。(=大様・おおよう)

そうそう(層層)

・幾重にも重なっているようす。

ヘリオトロープ

・原産地はペルー。18世紀頃ヨーロッパに伝わったらしい。和名ニオイムラサキ・キダチルリソウ(木立瑠璃草)。夏から秋にかけて開花する紫色(または白)の花が、紫陽花チックに集まって大きな花のような心持ちがする。バニラのような甘い香りを持つことから「香水草」などとも呼ばれる。現在よく市販されているのはむしろ香りの少ないビッグヘリオトロープという品種だそうだ。豊かな香りを持つコモンヘリオトロープもある。
・ヘリオトロープの名称は、ギリシア語の「太陽に向かう」に由来する。今日の日本の「変身ヒーローもの」のルーツとも云われる(誰がそんなことを?)ローマ時代の著作家オウィディウスの「変身物語」。ここに治められた話に、
「太陽神ヘーリオスの寵愛をかつて受けていたオーケアノスの娘クリュティエが、その寵愛を取り戻すべく現在の太陽神の恋人レウコトエを誹謗中傷によって死に至らしめると、それを知ったヘーリオスの心が一層遠ざかってしまった。泣きながら太陽神が東からのぼり西に沈むのを毎日見続けたクリュティエは、ある日つねに太陽の方を向く花、ヘリオトロープに変じてしまいました。」
というような話がある。実際のヘリオトロープが太陽の方を向き続けることはないようだが、この話はもっと相応しいヒマワリの逸話として語られることが多いようだ。
・したがって「献身的な愛」とか「熱望」とかいう花言葉を持つ。はたしてここに物語を解くヒントが隠されているものだろうか。だとするなら、それは美禰子に自分の「献身的な片思い・熱望」を手渡す三四郎の行為であり、また最後の場面で自らもまた「献身的な片思い・熱望」を持った女であることを三四郎に隠喩する美禰子の行為にあるだろう。もちろん美禰子の相手は、三四郎ではないのである。この美禰子と三四郎の思いの共有(ただし方向が一致しない)は、ちょうどストレイシープの場面に対応している。
・「ヘリオトロープ」の香水はどこかに、日本で初めて輸入された香水でそれは日露戦争の直後のことであると説明されていた。ちょうど流行に乗っていたとすれば、あるいは三四郎の言葉を待つまでもなく、有力選択候補にあらかじめ入っていたのかもしれない。

文芸協会(ぶんげいきょうかい)

・1806年に坪内逍遥、島村抱月らによって結成され、諸芸術の革新を志すも、実際は演劇を中心にした運動で知られ、新劇運動の開始を告げた団体。1907年11月に開かれた第2回公演では、杉谷代水台本の「大極殿」(入鹿の話)や、坪内逍遥の「ハムレット」が上演された。第12章で三四郎が観客として見物するという設定になる。

あるんだのに

・これを読んでいて、今日ではよく沖縄の人が使用する言葉として知られる「あるんだのに」が、結局は本土で廃れたものが残っているのかしらと、ふと思った。

淡泊(たんぱく)

・味や色、感じなどがあっさりしている、薄味である、さっぱりしている。
・性格がさっぱりしている。拘泥(こうでい)しない。

言条・言状(いいじょう)

・言い分。
・「とは言い条」で、「とは言っても」

和気靄然(わきあいぜん)

・なごやかな気分がみなぎっているさま。(三省堂、スーパー大辞林より)

翻弄(ほんろう)

・思うがままにもてあそぶこと。手玉に取る。

向後(こうご)

・今後。これより先。



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