・1886年。フランスのパリで上演された喜劇「ファン・ド・シエクル(fin de siecle)」(世紀末)が流行して、その言葉が19世紀末の諸芸術のうち、ある傾向をもつものを好んで指す言葉としてもてはやされた。傾向としては、一つには「退廃的(デカダンス)」、「懐疑主義」、「幻想的」、「神秘主義」いった性格を指向して、前進や発展や健全と言った言葉よりも、行き詰まりや淀み、暗がりを思い起こさせるような、「ぼんやりした不安」を起こさせるようなものを指す。また、作品があまりにも俗的(スノビズム)で大衆的で芸術的発展に対して手の施しようのないような場合にも、使うことがあった。というより、芸術だけでなく事件でも天気でも、何となく世紀末の気がしたら、「世紀末」と口癖するぐらいの意味で、芸術や文学の傾向を括るようになったもので、特定の傾向を持った運動を指すわけではない。
・ただこうした傾向から、オスカー・ワイルドの「サロメ」のような作品や、ボードレールの詩、ステファヌ・マラルメの「牧神の午後」のような象徴主義、ギュスターヴ・モローの怪しき気高さなど、数え上げればキリがない。当時の西洋の芸術的潮流は、急速な西洋化を進める日本にもすぐに伝わってきたので、ここで与次郎の使った「世紀末の顔」も彼が新しい文芸を志すものであるからには、単に世紀の終わりに感じる閉塞感や不安といった意味ではなく、この芸術運動に掛けているわけだ。しかし三四郎はそうしたことはまるで知らないので、「ある社会の消息に通じていなかった。」となる。
・善き行いを賛え、それを記して人々に知らしめること。
・主義や主張などを公然と提示すること。
・皆に向かって言いふらすこと。
・世の中のありさま。世態(せたい)。(三省堂、スーパー大辞林より)
・江戸時代になって作られた一種の灯台を「灯明台」とか「かがり屋」と呼んだ。石積み土台の上に木造の小屋を置き、木を燃やして灯りとしたそうだ。
・「灯明」という言葉自体は、神仏に供える火のことをさす。
・行灯(あんどん・あんどう)とは、灯火を灯すための道具で、内側に油皿を入れて灯した火の回りに、木枠などを覆ってそれに和紙などを貼り付けたもの。
・そのうち円筒形のものを丸行灯という。
・キセルの火皿のある頭の部分。またキセルの頭のように曲がった恰好。(キセルは刻みたばこを嗜む時の道具。ただし明治にはいると紙タバコに取って変わられていった。ちなみに1898年にはたばこ専売法が出されて、国家による専売制に移行した。日本専売公社は1985年に解体したのである。)
・人の首や頭を粗野(そや)に表現する言葉。
・陸軍駐屯地として、将校のために設けられたクラブ。
・現在の天皇の誕生日を祝う祝日。敗戦後は天皇誕生日と呼ばれる。
・ラッキョウ(辣韮・辣薑)のような色つやのといった意味か。
・唐代の漢詩家、韓愈(かんゆ)(768-824)の詩の一節に由来。気候も涼しく夜の長い秋こそ、灯火(燈火)の下で読書するのに適している。といった意味。
・たいして重要でない。取るに足りない。些細(ささい)なこと。
・口ぶり。話しぶり。
・口元。
・低回(ていかい)とは、「物思いに耽ってうろうろすること。行ったり来たりすること」といった意味。
・「但し書き」は、決して間違いを正し書きという意味ではなく、「ただし~である」というように、本文や全文に条件や説明を加えた文をさす。
・過去に歓喜したこと。その出来事。多く「旧歓を温める」という使い方をする。
・安らかであり、落ち着いているようす。。
・天にまで通じること。天に届くこと。
・通天橋の省略。またその橋にはえる楓(かえで)の種類を指すこともある。
1.差し控える、遠慮する。(「人目をはばかる。」など)
2.幅を利かせる。一杯に広がる。(「憎まれっ子世にはばかる」など)
→変な用例をどうぞ
「世に憚る憎まれっ子さえ世を憚るほどのこのご時世、いかがおすごしでしょうか」
・「法華経」で「火宅の譬喩(ひゆ)」「三車火宅の喩」と呼ばれるものがある。「火事に燃えさかる家に気づかず遊ぶ子らを三つの車の玩具があるからといって自力で脱出させる」というだけでは、全然主旨が分からないだろうが、かといって全体を説明するには面倒な労力が必要だから、ここではまあ、「火宅とは現世の煩悩の例えだ」ぐらいで終わりにしておこう。
・空のそと。天のかなた。遙かかなた。(奇想天外などと使用)
[天涯(てんがい)]
・空の果て。故郷を遠く離れた場所。(天涯孤独などと使用)
・古風な言い方で、「強く願う。」「切望する。」の意味。
・「眇(びょう・すがめ)」とは名詞として「片目が細い、潰れている」とか「横目で見る」とかいった意味。
・ここでは形容動詞として「わずかな」とか「とるにたらない」とかいった意味。
・ギリシア語の「エイロネイア」(無知をよそおう)に由来する。哲学では特に、ソクラテスが自分の無知を埋めんがために教えを受けるように質問を投げかけつつ、相手の無知を導き出すという、「ソクラテスのエイロネイア」が知られる。
・作劇法としてドラマティック・アイロニーというものがある。これは、ある登場人物が自分の置かれた状況を知らずに吐く台詞が、別の場面も見て状況を知っている観客から視て、非常に皮肉に聞こえるという効果のことである。手っ取り早く説明すれば、観客からみて当日殺されることが分かっている人物が、「明日は僕の誕生日だから、ぜひともパーティーを開いてくれたまえ。」とか言うようなことである。
・ロマンティック・アイロニーは、ちょっと正確に分からないので、とりあえず新潮文庫「三四郎」の注を引用させて貰っておこう。「ドイツ浪漫派のシュレーゲル、ティークらがその芸術的創作ならびに批評の原理として説いた語。芸術家の自我意識だけをよりどころとし、すべてを超越した精神的自由性を意味する。ここでは超越的な態度の比喩。」とある。
・ドイツロマン主義の理論的体系をはかり軌道に乗せたような思想家・文筆家。兄(あに)さんのアウグスト・ヴィルヘルム・シュレーゲルと共にシュレーゲル兄弟として知られる。
・いつもの時刻。
・例のもの。例のこと。
・入り口や仕切のための扉や窓など開けたり閉めたりすることの出来る部分の総称。
・どちらもかめの中。花瓶の中の意味。
・幾つかの戸を蝶番(ちょうつがい)で合わせて、折れながら開いたり閉じたり出来るようにしたもの。
・もっぱらパリで活躍したフランスの画家。百科全書でお馴染みのディドロに絶賛されて、フラゴナールらと人気を分かち合うほどだったが、次第に忘却されてしまったとか。
・肉欲にふける。
・肉体的な。官能的な。
・許可を与えること。
・考え。気持ち。
・よく考えて判断すること。(他は略。)
・手本(たもと)の意味で、特に和服の手を出す袖(そで)口の下の袋になった部分。
・転じて、「かたわら」とか「ほとり」といった意味。
・表現が簡単で、要領を得ている。
・他の考え。雑念。
・尋(八尺)の常(二倍)という意味から、わずかな長さを表す。
・普通。変わった点がないこと。
・好意的に、品がよいとか、立派の意味もある。
・前掛け、つまりエプロンのこと。
・かがり縫いしてある。と言うことであるが、かがり縫いについては検索して調べて下さい。
・木を組み合わせて作った棚や横木。戸や障子の骨の部分。
・戸締まりのためのかんぬき。
・険しい場所に棚のように、あるいは木で迫り出して作った道。
・ボア科の蛇の総称。種類によってどでかいのが居る。
・もっぱら女性用の、毛皮や羽毛で出来た長襟巻き。
History of Intellectual Development
・イギリスの思想家、歴史家であるクロージャー(1849-1921)の書いた「知的発達の歴史」の2巻目を指している。漱石の蔵書にあるこの本には、沢山の書き込みが見られるそうだ。
・急がせる。せきたてる。(せつく・責付くが転じたもの)
・主要な部分。主眼。(三省堂、スーパー大辞林より)
・論じ合って是か非か判定すること。その判定。
・言い争うこと。
・学問・芸術などにすぐれた女性。女流の意でも用いる。(三省堂、スーパー大辞林より)
・あらすじ。概要。
・「実見」とは「実際に見ること」。譚は「語る」あるいは「深い」。関係ないが、オラトリオは漢字で書くと「聖譚曲(せいたんきょく)」となる。さらに関係ないが、シソ焼酎でお馴染みのタンタカタンは漢字で「鍛高譚」と書かれる。「鍛高」は北海道にある地名だが、元々はアイヌ語で魚のカレイやヒラメを指すのだそうだ。・・・相変わらず脱線だらけである。
・したこと。仕業。おこない。
・原因。せい。
・数人の集まり。小さな会。
・イギリスの劇作家。アフラ・ベーンの作品に基づく「オルノーコ」は1696年に発表された。
・嘆く、あるいは感心して出す、溜息や声を指す。