藤原俊成 ――歌論、和歌とその朗読

藤原俊成 ――歌論、和歌とその朗読

 『古来風体抄 (こらいふうていしょう)』について
………歌人の中の歌人ともてはやされる藤原定家の父親である俊成の、晩年の執筆であるが、その選出にはまた息子との趣味の違い、和歌への理想の違いも見て取れるような和歌撰集。上に万葉集を、下に勅撰和歌集のアンソロジーを、自らの選出した千載和歌集までを抜き出した、教科書じみた和歌撰集に、和歌の起こりや歴史を折り込んだ名著。執筆動機は、息子の定家卿との恋仲も噂される、新古今集の和歌のヒロイン、式子内親王からの依頼ではなかったかと考えられている。
………どうでもよいが、この書物の執筆態度と、和歌の撰集を、定家卿と比べると、この親子のなんと似たところのあるものか、という感慨と、和歌の資質の異なるものであるということ、さらには定家卿の鑑識眼の時代にぬきんでた点などが、なおさら思い起こされるものである。
 『古来風体抄』 その朗読について
………原文掲載などわたしには不可能である。自らの助けとして朗読するものではあるが、この朗読は小学館の『新編 日本古典文学全集 87 歌論集』の『古来風体抄』を朗読したものであり、下の音声ファイルは、この書籍のページ数や見出しをもって分割するものであるから、これを利用する場合は、書籍の購入と利用が、もっとも簡便である。些細な読み違いは、気づいても時間の都合で、そのままにしてあるので、あしからず。
 『古来風体抄 (こらいふうていしょう)』 直接音声ファイルへ
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 上一』
………和歌とその歴史 (p249~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 上二』
………万葉集からの勅撰について (p263~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 上三』
………万葉集巻第一から巻第四 (p276~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 上四』
………万葉集巻第五から巻第九 (p290~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 上五』
………万葉集巻第十から巻第十一 (p300~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 上六』
………万葉集巻第十二から巻第二十 (p314~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 上七』
………万葉集の特色、歌の病、古歌の伝承についてなど (p333~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 下一』
………古今和歌集その一 (p349~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 下二』
………古今和歌集その二 (p364~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 下三』
………後撰和歌集 (p374~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 下四』
………拾遺和歌集 (p384~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 下五』
………後拾遺和歌集 (p398~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 下六』
………金葉・詞花和歌集 (p417~)
『古来風体抄 (こらいふうていしょう) 下七』
………千載和歌集、識語 (p434~)

藤原俊成 (ふじわらのとしなり) (1114-1204)

藤原俊成 (1114-1204) 生涯略歴
………藤原道長の流れを汲む御子左家(みこひだりけ)ではあるが、すでに歌人として知られていた藤原俊忠(としただ)の息子として生を受けた俊成は、しかし十歳の時に父親を失うと、義理の兄である藤原顕頼の養子になるなど、順風満帆とは言えない曲折を得ながら、次第に歌人として知られるようになっていった。
 俊成以前の時代の大御所と言えば、源俊頼(としより)藤原基俊(もととし)がライバル関係を結んでいたことで知られているが、俊成は二十代半ばになってから、晩年の藤原基俊に師事したことが知られている。もっとも、歌人としての意識は定まっていたようで、あるいは政略的なことかもしれず、実際は源俊頼の方をはるかに優れたものと意識していたことが、鴨長明の「無名抄」から伝えられている。
 九条兼実(かねざね)に認められ、歌人としての名声を高めると、やがては後白河法皇の命により勅撰和歌集『千載和歌集』(1188)の、ただ一人の撰者となる名誉を得ることとなった。(歌人としては究極的な栄誉である)
 その後、後白河法皇亡き後、兼実(かねざね)の失脚に合わせて、息子の定家同様、肩身の狭い状況に置かれたものと思われるが、兼実(かねざね)の復活と後鳥羽院の庇護のもと、晩年を名声のままに過ごしたようである。
………「一ノ谷の戦い」で源氏に討たれた平忠度(たいらのただのり)(1144-1184)の師としても知られ、京を逃れる忠度が、俊成のもとに立ち寄り、俊成は彼の亡き後、「よみひと知らず」として、千載和歌集にその和歌を偲ばせたという逸話が残されている。
………1176年に出家しての法名を「釈阿(しゃくあ)」という。和歌に関わっていると、聞くこともある名称なので、覚えておいても損はない。

藤原俊成のリンク

ウィキペディア
………「藤原俊成」の解説
千人万首 藤原俊成
………「やまとうた」のなかの「藤原俊成」の和歌紹介

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