藤原公任 「深窓秘抄」 原文と朗読

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藤原公任 「深窓秘抄」(しんそうひしょう)

朗読者注

・まず『金玉集』は、おおよそ『古今和歌集』『後撰和歌集』『拾遺抄(拾遺集のもととなった藤原公任の私撰集)』からの撰集になっている。「春夏秋冬」「恋」「雑」に分類。このうち、3/4が続く『深窓秘抄』に取られる。すでに花山院による『拾遺集』が成立した後に、まず『金玉集』が、続けて『深窓秘抄』が編纂されたものかとされる。藤田美術館のものが唯一の完本であるそうだ。もともとは詞書のあったものが、後に改編され、今日の詞書無しのものが残されたのかもしれない。。

・いずれにせよ、今日に残る『深窓秘抄』は、『金玉集』よりも語り口調に優れ、また分類にこだわったため時にムラのある『和漢朗詠集』の和歌に対して、宝玉のきらめきをもって鎮座している。

・朗読は、『恋』までを「朗読1」に、『恋』からを「朗読2」に収める。

深窓秘抄 (しんそうひしょう)

きのふこそ 年は暮れしか 春がすみ
  かすがの山に はや立ちにけり
          山部赤人(やまべのあかひと) 拾遺集3

[昨日すでに 年は暮れたか 春がすみよ
   春日の山に はやくも立ち上るとは]

春立つと いふばかりにや み吉野の
  山もかすみて けさは見ゆらむ
           壬生忠岑(みぶのただみね) 拾遺集1

[立春を迎えたのだと
   言うばかりですね、深山の
  吉野の山さえ、かすんでいるようにさえ……
     今朝は見えるような気がします。]

[「深窓秘抄」では「けふはみゆらむ」]

吉野山 峰のしら雪 いつ消えて
   けふは霞(かすみ)の 立ちかはるらむ
           源重之(みなもとのしげゆき) 拾遺集4

[吉野山の、峰の白雪さえも
  いったいいつの間に消えてしまって、
   今朝はかすみの白に、色を違えているのだろう]

[リアリズムという束縛にあれば、白雪は消えて、霞こそ立ち上るべきに、この和歌は、同じ白の色彩としての象徴が、雪から霞へと変じたという、まるで様式的変化、つまりは春日となれば枯れ草さえも、萌え出ずる若芽を表すこそ、パターン化された情緒性には相応しいという、人の根本的な情緒性に由来する、空想的なホワイトカラーのイメージ変換を、たやすくも成し遂げているばかりでなく、その表現に成功している点に於いて、リアリズムよりも上位概念を求めた時代の、象徴的な名歌となっているように思われてならない。]

訪ふ人も なき宿なれど 来る春は
  やへむぐらにも さはらざりけり
           紀貫之(きのつらゆき) 古今六帖1306

[尋ねる人さえも
  無いようなわたしの宿りではあるけれど
   そっと訪れるという春の気配は
  春に触れては茂りはじめるような
    八重葎のような雑草にさえも
   未ださわらないように思われます。
  (けれども秘かに春は来ています)]

朝日さす 峰のしら雪 群消(むらぎ)えて
  春のかすみは たなびきにけり
           平兼盛(たいらのかねもり)
             麗景殿(れいけいでん)女御歌合

うぐひすの 声なかりせば 雪きえぬ
  やま里いかで 春を知らまし
           藤原朝忠(ふじわらのあさただ) 拾遺集10

香をとめて たれ折らざらむ 梅の花
  あやなしかすみ 立ちな隱しそ
           凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 拾遺集16

梅の花 それとも見えず ひさかたの
  あまぎる雪の なべてふれゝば
           伝 柿ノ本人麻呂 古今集334

わが背子(せこ)に 見せむと思ひし 梅の花
   それとも見えず 雪の降れゝば
           山辺赤人(やまべのあかひと) 万葉集

ときはなる 松のみどりも 春来れば
  いまひとしほの 色まさりけり
           源宗于(みなもとのむねゆき) 古今集24

焼かずとも 草は萌(も)えなむ 春日野を
  ただ春の日に まかせたらなむ
           壬生忠見(みぶのただみ) 新古今集78

ゆきて見ぬ 人もしのべと 春の野の
  かたみに摘(つ)める 若菜なりけり
           紀貫之 新古今集14

子(ね)の日する 野辺に小松の なかりせば
   千代のためしに なにを引かまし
           壬生忠岑(みぶのただみね) 拾遺集23

ちとせまで 契(ちぎ)りし松も けふよりは
  君にひかれて よろず代(よ)やへむ
           大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ)

[拾遺集24には「限れる松」]

いそのかみ 古きみやこを 来てみれば
  むかしかざしゝ 花咲きにけり
           中務(なかつかさ) 中務集⇒新古今集88

山たかみ 雲居(くもい)に見ゆる さくら花
   こゝろのゆきて 折らぬ日ぞなき
           凡河内躬恒 古今集358

山ざくら あくまで色を 見つるかな
  花散るべくも 風吹かぬ世に
           平兼盛 兼盛集⇒続古今104

見てのみや 人にかたらむ 山ざくら
  手ごとに折りて 家づとにせむ
           素性法師(そせいほうし) 素性集

[古今集55には、三句目「さくら花」]

世の中に 絶えてさくらの 咲かざらば
  春のこゝろは のどけからまし
            在原業平(ありわらのなりひら) 伊勢物語

[古今集53には三句目「なかりせば」]

わが宿の 花見がてらに 来る人は
   散りなむのちぞ 恋しかるべき
            凡河内躬恒 古今集67

木(こ)のもとを すみかとすれば おのづから
  花見る人に なりにけるかな
            花山院(かざんいん) 玄々集⇒詞花集276

[「深窓秘抄」と異なり、能因撰の「玄々集」また「詞華集」には「花見る人になりぬべきかな」]

春の野に あさる雉子(きゞす)の つま恋ひに
   おのがありかを 人に知れつゝ
            大伴家持(おおとものやかもち)

[「万葉集」現訓は、
春の野に あさる雉子(きゞし)の つま恋ひに
   おのがあたりを 人に知れつゝ]

いにしへは 散るをや人の 惜しみけむ
   花こそ今は むかし恋(こ)ふらし
       一條摂政藤原伊尹(これまさ/これただ) 拾遺集1279

[「深窓秘抄」では「今は花こそ」]

散り散らず 聞かまほしきを ふるさとの
  花見てかへる 人もあはなむ
            伊勢(いせ) 拾遺集49

[「深窓秘抄」では「聞かまほしきに」]

さくら散る 木(この)のした風は 寒からで
  空に知られぬ 雪ぞふりける
            紀貫之 拾遺集64

花もみな 散りぬる宿は ゆく春の
  ふるさとゝこそ なりぬべらなれ
            紀貫之 拾遺集77

けふのみと 春を思はぬ 時だにも
  立つことやすき 花のかげかは
            凡河内躬恒 古今集134

家に行きて なにを語らむ あしひきの
  山ほとゝぎす ひと声も鳴け
            久米広縄(くめのひろただ) 万葉集

行きやらで 山路暮らしつ ほとゝぎす
  いまひと声の 聞かまほしさに
            源公忠(みなもとのきんただ) 拾遺集106

さ夜更けて 寝覚めざりせば ほとゝぎす
  人づてにこそ 聞くべかりけれ
            壬生忠見(みぶのただみ) 拾遺集104

年を経て かよひ馴れにし やま里の
   かど問(と)ふまでに 咲ける卯の花
            藤原公任(ふじわらのきんとう) 公任集

深山(みやま)いゞて 夜半にや来(き)つる ほとゝぎす
    あかつきかけて 声の聞こゆる
            平兼盛(たいらのかねもり) 天徳内裏歌合 拾遺集101

さつき闇 おぼつかなきに ほとゝぎす
  鳴くなる声の いとゞはるけさ
            明日香皇子(あすかのみこ)

[拾遺集124はこれをもとにしたもの
 さつき闇 くらはし山の ほとゝぎす
  おぼつかなくも なき渡るかな
            藤原実方

夏の夜を 寝ぬに明けぬと 言ひ置きし
  人はものをや 思はざりけむ
            明日香皇子(あすかのみこ)

祈事(ねぎごと)も きかずあらぶる 神たちも
   けふは名越(なごし)と 人はいふなり
            源順(みなもとのしたごう)

[「順集」では
 ねきごとを きかすあらふる 神田にも
   けふは名越と 人は知るらなむ
「古今六帖」では
ねきごとも きかてあらふる 神田にも
   けふの名越の はらへといふなり]

秋立ちて いく日(か)もあらねば この寝ぬる
  朝けの風は たもと寒しも
            安貴王(あきのおおきみ) 万葉集

天の河 川辺(かはべ)すゞしき 七夕(たなばた)に
  あふぎの風を なほや貸さまし
            中務(なかつかさ) 拾遺集1088

逢坂(あふさか)の 関の清水に 影見えて
    今やひくらむ もち月の駒(こま)
            紀貫之 拾遺集170

もち月の 駒ひきわたす 音すなり
  瀬田の長道(ながみち) 橋もとゞろに
            平兼盛(たいらのかねもり) 麗花集

うつろはむ ことだにをしき 秋萩(はぎ)を
  折れぬばかりも おける露かな
            伊勢 拾遺集183

[「新撰和歌集」では「秋萩に」「置ける白露」]

かの岡に 萩刈るをのこ 縄をなみ
  練(ね)るや練り麻(そ)の 砕けてぞ思ふ
            凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 拾遺集813

[「深窓秘抄」では初句「遠方(をちかた)に」。詠み人知らずとある。]

もみぢせぬ ときはの山に 住む鹿は
  おのれ鳴きてや 秋を知るらむ
            大中臣能宣(おおなかとみのよしのぶ) 拾遺集190

秋はなほ 夕まぐれこそ たゞならね
   荻(をぎ)のうは風 萩(はぎ)のした露
            藤原義孝(ふじわらのよしたか) 義孝集 和漢朗詠集

[「深窓秘抄」では「あきはなほ たゞならずこそ おもほゆれ」]

さらしなに 宿りは取らじ をば捨の
  山まで照らす 秋の夜の月
            壬生忠見(みぶのただみ)

[「深窓秘抄」では「山路まで照れ」
この和歌、古今和歌集の次の歌に基づく
わがこゝろ なぐさめかねつ 更科(さらしな)や
  をばすて山に 照る月を見て]

水のおもに 照る月なみを かぞふれば
  今よひぞ秋の 最中(もなか)なりける
            源順(みなもとのしたごう) 拾遺集171

かりに来(く)と 聞くにこゝろの 見えぬれば
  わが袂(たもと)には 寄せじとぞ思ふ
            藤原敦忠(ふじわらのあつだだ) 金玉集27

[伊勢集に「いふにこころの」として掲載。あるいは伊勢の和歌か?]

川霧の ふもとをこめて 立ちぬれば
  空にぞ秋の 山は見えける
            清原深養父(きよはらのふかやぶ) 拾遺集202

夕されば 佐保(さほ)の川原の 川霧に
  友まどはせる 千鳥鳴くなり
            紀友則(きのとものり) 拾遺集238

むら/\の 錦(にしき)とぞ見る 佐保山の
  はゝそのもみぢ きりたゝぬ間は
            藤原清正(きよただ) 和漢朗詠集306

[ただし清正集には以下の類歌があるのみ
   むらながら 見ゆるもみぢし 神無月
      また山かぜの たゝぬなりけり]

ほの/”\と ありあけの月の 月かげに
  もみぢ吹きおろす 山おろしの風
            源信明(みなもとのさねあきら) 新古今集591

あすか川 もみぢ葉ながる 葛城(かづらき)の
  山の秋かぜ 吹きぞしくらし
            柿本人麻呂 新古今集541

暮れてゆく 秋のかたみに 置くものは   我が元結(もとゆひ)の 霜にざりける
            平兼盛(たいらのかねもり) 拾遺集214

山さびし 秋もくれぬと 告ぐるかも
  槙(まき)の葉ごとに おける朝霜
            藤原八束(やつか)

[和漢朗詠集には「秋も過ぎぬと」]

見る人も なくて散りぬる 奧山の
  もみぢは夜の 錦なりけり
            紀貫之 古今集297

こゝろあてに 折らばや折らむ はつ霜の
  置きまどはせる しら菊の花
            凡河内躬恒 古今集277

夜をさむみ 寝ざめて聞けば 鴛(をし)ぞ鳴く
  はらひもあへず 霜や置くらむ
            詠み人知らず 後撰集478

ちはやぶる 賀茂の川霧 きるなかに
  しるきはすれる 衣なりけり
            源順(みなもとのしたごう)

み山には あられ降るらし 外山(とやま)なる
   まさきの葛(かづら) 色づきにけり
            詠み人知らず 古今集1077

思ひかね 妹(いも)がりゆけば 冬の夜の
  川風さむみ 千鳥なくなり
            紀貫之 拾遺集224

み吉野の 山のしら雪 積もるらし
  ふるさと寒く なりまさるなり
            坂上是則(さかのうえのこれのり) 古今集325

[「深窓秘抄」には初句「住吉の」]

年ふれば こしのしら山 老いにけり
  おほくの冬の 雪つもりつゝ
            壬生忠見(みぶのただみ) 拾遺集249

[「深窓秘抄」では初句「雲のゐる」四句「おほくの年の」]

かぞふれば わが身に積もる 年月を
  送り迎ふと なにいそぐらむ
            平兼盛(たいらのかねもり) 拾遺261

わが恋は ゆくへも知らず 果てもなし
  逢ふをかぎりと 思ふばかりぞ
            凡河内躬恒(おおしこうちのみつね) 古今集611

人知れず 絶えなましかば わびつゝも
  なき名ぞとだに 言はましものを
            伊勢 古今集810

[「伊勢集」「深窓秘抄」では「いふべきものを」]

今来むと 言ひしばかりに なが月の
  ありあけの月を 待ち出でつるかな
            素性法師(そせいほうし) 古今集691

むばたまの 闇のうつゝは さだかなる
  夢にいくらも まさらざりけり
            詠み人知らず 古今集647

[「深窓秘抄」には三句「さやかなる」、古今集にも「さやかなる」とするものあり]

頼めつゝ 逢はで年ふる いつはりに
 こりぬこゝろを 人は知らなむ
            凡河内躬恒 古今集614

[「深窓秘抄」「三十六人撰」では在原業平の和歌とする]

よそにのみ 見てやゝみなむ 葛城(かづらき)や
  高間(たかま)の山の みねのしら雲
            詠み人知らず 新古今集990

逢ふことの 絶えてしなくは なか/\に
  人をも身をも うらみざらまし
            藤原朝忠(あさただ) 拾遺集678

逢ひ見ての のちのこゝろに くらぶれば
  むかしはものも 思はざりけり
            藤原敦忠(あつただ) 拾遺集710

[「百人一首」では「むかしはものを」]

頼めつゝ 来ぬ夜あまたに なりぬれば
  またじと思ふぞ 待つにまされる
            柿本人麻呂 拾遺集848

こぬ人を したに待ちつゝ ひさかたの
  月をあはれと 言はぬ夜ぞなき
            紀貫之 拾遺集1195

風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ
  くだけてものを 思ふころかな
            源重之(みなもとのしげゆき) 詞花集211

あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の
  なが/”\し夜を ひとりかも寝む
            柿本人麻呂 拾遺集778

ほの/”\と 明石(あかし)の浦の 朝霧に
  島かくれゆく 舟をしぞ思ふ
            柿本人麻呂 古今集409

世の中を なにゝたとへむ あさぼらけ
  漕ぎゆく舟の あとのしら波
            沙弥満誓(しゃみまんせい)拾遺集 1327

[「万葉集」には
   世の中を なにゝたとへむ 朝びらき
      漕ぎ去(い)にし舟の 跡なきごとし]

和歌の浦に 潮満ち来れば 潟(かた)をなみ
  葦辺(あしべ)をさして 田鶴(たづ)なき渡る
            山辺赤人 万葉集

藻がり舟 今ぞなぎさに 来寄(きよ)すなる
  みぎはの田鶴(たづ)の 声さわぐなり
            詠み人知らず 拾遺集465

天の原(あまのはら) ふりさけ見れば
  春日なる 三笠の山に
     出でし月かも
            阿倍仲麻呂(あべのなかまろ) 古今集406

わたの原 八十島(やそしま)かけて こぎ出でぬと
  人にはつげよ 海人(あま)のつり舟
            小野篁(おののたかむら) 古今集407

いつしかと 君にと思ひし 若菜をば
   法(のり)のためにぞ けふは摘みつる
            村上天皇 拾遺集1338

[「金玉集」も「ためにぞ」だが、他にも「法の道にぞ」有り]

まだ知らぬ 人もありけり あづま路(ぢ)に
  我もゆきてぞ 住むべかりける
            藤原実頼(さねより) 後撰集1386

君が住む 宿のこずゑの ゆく/\と
  隠るゝまでに かへり見しかな
            菅原道真(すがわらのみちざね) 拾遺集351

忘られて しばしまどろむ ほどもがな
  いつかは君を 夢ならで見む
            中務(なかつかさ) 拾遺集1312

すゑの露 もとのしづくや 世のなかの
  おくれ先だつ ためしなるらむ
            僧正遍昭(そうじょうへんじょう) 新古今集757

人の親の こゝろは闇に あらねども
  子をおもふ路(みち)に 惑(まど)ひぬるかな
            藤原兼輔 後撰集1102

琴の音(ね)に みねのまつ風 かよふらし
  いづれの尾(を)より 調(しら)べそめけむ
            徽子女王(きしじょおう)/斎宮女御 拾遺集451

[「斎宮女御集」では「かよふなり」]

思ひやる こゝろばかりは さはらじを
  なにへだつらむ 峰のしら雲
             橘直幹(たちばなのなおもと)後撰集1306

年(とし)ごとの 春のわかれを あはれとも
   ひとに遅るゝ ひとぞ知りける
             藤原元真(もとざね) 元真集 金玉集67 和漢朗詠集639

[ただし、ネット上のデータベースには、「ひとにおくるも」とあり。和漢朗詠集には「としごとに」]

ありあけの 月のひかりを 待つほどに
  我が世のいたく 更(ふ)けにけるかな
             藤原仲文(なかふみ/なかふん) 拾遺集436

岩橋(いはゞし)の 夜のちぎりも たえぬべし
   明くるわびしき かづらきの神
             小大君(こおおきみ) 拾遺集1201

いのちだに こゝろにかなふ ものならば
  なにか別れの 悲しからまし
             白女(しろめ) 古今集387

[「深窓秘抄」「金玉集」では「かなしかるべき」]

たよりあらば いかでみやこへ 告げやらむ
  けふ白河の 関は越えぬと
             平兼盛(たいらのかねもり) 拾遺集339

まだ知らぬ ふるさと人(びと)は けふまでに
  来(こ)むとたのめし 我を待つらむ
             菅原輔昭(すがわらのすけあき) 新古今集909

限りあれば けふぬぎ捨てつ ふじごろも
  はてなきものは なみだなりけり
             藤原道信(みちのぶ) 拾遺集1293

しばしだに へがたかりける 世のなかに
  うらやましくも 澄(す)める月かな
             藤原高光(たかみつ)

[拾遺集435には
かくばかり へがたく見ゆる 世のなかに
  うらやましくも 澄(す)める月かな]

おくれゐて 鳴くなるよりは 芦鶴(あしたづ)の
   などか千歳(ちとせ)を ゆづらざりけむ
             藤原実頼(さねより)

[「拾遺集497」には「などて齢(よはひ)を」]

天降(あまくだ)る あらひと神の あひおひを
  思へばひさし 住吉の松
             安法法師(あんぽうほうし) 拾遺集589

なげきつゝ ひとり寝(ぬ)る夜の あくる間は
  いかにひさしき ものとかは知る
             藤原道綱母(みちつなのはは) 蜻蛉日記 拾遺集912

[「深窓秘抄」では「うらみつゝ」]

みわの山 いかに待ちみむ 年ふとも
  たづぬる人も あらじと思へば
             古今集780

わがきみは ちよにやちよに さゞれいしの
  いはほとなりて 苔のむすまで
             詠み人知らず 古今集343

[すこし後に初句「君が代は」が一般化しつつ国歌へいたる]

2013/09/04

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