梁塵秘抄 二句神歌、雑の朗読

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梁塵秘抄、巻第二 二句神歌 百二十一首

雑 四十九首

みてぐらは
 ちるかとみれば すみよしの
  まつなどの このまより
 もらん月をばや
  いかゞせんずる (446)

ちはやぶるかみ
 かみにまします ものならば
  あはれとおぼしめせ
 かみもむかしは 人ぞかし (447)

かみがきや
 みむろのやまの さかきばは
  かみのみまへに
   しげりあひにけり (448)

月もつき
 たつヽきごとに わかきかな
  つく/”\をいをする
 わがみ なにヽなるらむ (449)

月はふね
 ほしはしらなみ くもはうみ
  いかにこぐらん
 かつらをとこは たゞひとりして (450)

はるのヽに
 こやかいたるやうにて
  ついたてる かぎわらび
 しのびて たてれ
   下すに とらるな (451)

かきごしに
 みれどもあかぬ なでしこを
  ねながら はながら
 かぜの ふきもこせかし (452)

ひんがしや
 かうせんのやまに
  なる/\ はなたちばなを
 やふさ ふさねて
  てにとると ゆめにみつ (453)

ふゆくとも
 はゝそのもみぢ なちりそよ
  ちりそよ なちりそ
   いろかへで みん (454)

ふくかぜに
 せうそくをだに
  つけばやと おもへども
 よしなき のべに
  おちもこそ すれ (455)

こひしくは
 とう/\おはせ わがやどは
  やまとなる
 みわのやまもと すぎたてるかど (456)

なみもきけ
 こいそもかたれ まつもみよ
  われをわれといふかたのかぜ ふいたらば
 いづれのうらへも なびきなむ (457)

須磨のうらに
 ひきほいたるあみの ひとめにも
  みてしかばこそ こひしかりけれ (458)

わがこひは
 おとゝひみえず きのふこず
  けふおとづれなくば
 あすのつれ/”\ いかにせん (459)

こひ/\て
 たまさかにあひて
  ねたるよのゆめは
   いかがみる
 さし/\きしと
  だくとこそ みれ (460)

つはりなに かきもがな
 たゞひとつ かきもかき
  ながとの いりうみの そのうらなるや
 いはのそばに つきたるかきこそや
  よむふみ かくても
   八十種好 しまこむじき
  たらうたる をのこゞは生め (461)

いせのうみに
 あさなゆふなに あまのゐて
  とりあぐるなる
 あはびのかゐの かたおもひなる (462)

われはおもひ
 人はのけひく これやこの
なみたかや あらいその
 あはびのかいの かたおもひなる (463)

あづまやの つまとも
 つゐにならざりける ものゆへに
  なにとてむねを あはせそめけむ (464)

みなれぎの
 みなれそなれて わかれなば
  こひしからんずらむものをや
 むつれ ならひて…… (465)

たかさごの
 たかゝるべきは たかゝらで
  など ひらのやま
 たか/”\たかと
  たかくみゆらん (466)

あめはふる
 いねとはのたぶ かさはなし
  みのとても もたらぬみに
 ゆゝしかりける さとの人かな
   やどかさず (467)

やまぶしの
 こしにつけたる ほら貝の
  丁とおち ていとわれ
 くだけてものを おもふころかな (468)

しづのをが
 しのをりかけて ほすころも
  いかにほせばか
   ひざらん ひざらむ
  なぬか ひざらむ (469)

おぼつかな
 とりだになかぬ おくやまに
  人こそ おとすなれ
   あなたふと
  修行者の とほるなりけり (470)

ねたるひと
 うちおどろかす つゞみかな
  いかにうつ手の たゆかるらん
   いとほしや (471)

あふみとて
 せたとてきたれば ありもあらず
  よしもなき くるもとの
 よどとてきたれば
  やまざきのはしへ きんけるは (472)

あづまより
 きのふきたれば めもゝたず
  このきたる こんのかりあをに
 むすめかへたべ (473)

すまのせき わだのみさきを
 かいまうたる くるまぶね
  うしまどかけて しほやひくらん (474)

よどがはの
 そこのふかきに あゆのこの
  うといふとりに
 せなかくはれて きり/\めく
    いとほしや (475)

ひくれなば
 をかのやにこそ ふしみなめ
  あけてわたらん
 ひつかはや ひつかは
  ひつかはの はし (476)

おまへより
 うちあげ うちおろし
  こすなみは
 つかさ まさりの
  しきなみぞ たつ (477)

このとのに
 よきふでづかの あるものを
  そこらのとみを かきよせる
 ふでのぢくの あるものを (478)

わがきみを なにゝよせへむ
 うらにすむ かめやまの
  いはかどにおひたる
   まつによそへむ (479)

たつものは
 うみにたつなみ むらすゞめ
  はりまのあかほにつくれる こしがたな
 ひとよすくせの あだなとか (480)

いざねなむ
 よもあけがたに なりにけり
  かねもうつ
 よひよりねたるだにも あかぬ心をや
   いかにせむ (481)

いかでまろ
 はりまのかみの わらはして
  しかまにそむる かちのきぬきむ (482)

やまをさが
 こしにさいたる つゞらぶち
   おもはむ人の こしにさゝせむ (483)

むすぶには
 なにはのものか むすばれぬ
  かぜのふくには なにかなびかぬ (484)

こひしとよ
 きみ こひしとよ ゆかしとよ
  あはばや みばや
 みばや みえばや (485)

つきもひも
 いかにうれしと おぼすらむ
  ながるゝほしの くらゐまされば (486)

さかづきと
 うのくふいをと 女ごは
  はうなきものぞ いざふたりねん (487)

さかづきと
 うのくふいをと 女ごは
  はてなきものぞ いざふたりねん (487)

なつくさの
 しげみにはむは こまかとよ
  しかとこそみめ あきのゝならば (488)

おほえやま
 いくのゝみちの とをければ
  まだふみもみず あまのはしだて (489)

をいのなみ
 いそひたひにぞ よりにける
  あはれこひしき わかのうらかな (490)

さよふけて
 鬼にんらこそ ありくなれ
  南無や帰依仏 なもや帰依法 (491)

法華経の
 たきゞのうへに ふるゆきは
まか曼だらの 花とこそみれ (492)

南無阿弥陀
 ほとけのみてに かくるいとの
  おはりみだれぬ こゝろともがな (493)

あみだ仏と
 申さぬ人は ふちのいし
  こふはふれども うかぶよぞなき (494)

2012/7/3

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