『増補再版 獺祭書屋俳話』について

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増補再版 獺祭書屋俳話について

獺祭書屋書生より

 獺祭書屋主人の俳話。俳諧の発祥より変遷を致し、蕉門概論及び季題句の紹介より、俳書の書評、芭蕉における発句の詳論。のみならず俳諧的紀行文、自作の掲載までを目論見、誹諧の小宇宙を築かんと欲す。

 若々しくも才走り、未熟を物とせず、正鵠を射貫く論評は、沈着なる学術を外す事ありしも、文学的霊感にあふれ、色あせざる覇気あり。此処に我、誹書を朗読し、主の意を果たさむ事を欲す。すなはち発句への道しるべとなし、佳作に触るゝ事を望む者なるべし。

   獺祭書屋書生 著す

増補再版 獺祭書屋俳話について

 獺祭書屋主人こと正岡子規が、「日本」新聞社に入社したのは明治25年(1892年)の12月である。それと前後して、6月26日発行の新聞「日本」に掲載された俳話から、入社後を経て同年10月20日発行の新聞「日本」掲載までの俳話までを、

 獺祭書屋主人著 (日本新聞社 発刊)
   『日本叢書(にほんそうしょ)
   獺祭書屋俳話 全』

として翌年明治26年5月21日に刊行したものが、『獺祭書屋俳話』(初版)である。

 この初版は、再版に際して、初版以後新聞「日本」に掲載された俳話を増補して、明治28年(1895年)9月5日に増補付き再版として刊行された。増補は、新聞「日本」に明治25年12月から明治27年1月までに掲載された俳話、さらに明治25年5月、初めて新聞「日本」と関わることとなった「かけはしの記」から、明治26年までの新聞「日本」掲載の紀行文を加え、附録として自作の俳句を巻末に置き、これを初版版の後に加えたもので、

 獺祭書屋主人著 (日本新聞社 発刊)
   『日本叢書(にほんそうしょ)
   増補・再版 獺祭書屋俳話』

として刊行された。さらに出版後の不満点、訂正などは、翌年明治29年12月に『獺祭書屋俳話正誤』として発表され、持論の修正や自作俳句の排除などを公表した。

本文テキストについて

一、底本は講談社の子規全集第四巻『俳論俳話一』による。ただし紀行文は『青空文庫』(そのもの)を底本とする。

一、旧漢字などは現代に改め、かつ所により平仮名とし、かつ句読点、中黒(なかぐろ)などを適時補い、かつ改行を適時行い、朗読および黙読用に最適化した。また「此(この)」「之(これ)」の平仮名か漢字か、「最も」「最(もっとも)」のふりがななどは、文脈での読みやすさも考慮に入れて仮名書きにするなど、読みやすさを考慮して、全体の統一にはこだわらなかった部分もある。

一、強調点には「」『』などを適時加える一方、原文にある傍点(ぼうてん)などの強調点はこれを却下した。

一、発句に附く俳人の名称、および他の場合も俳人の名称は号であるから、「松尾芭蕉」ではなく「芭蕉」のみが正しい。しかし名称としては判別と検索のためには「名字+俳号」の方が分かりやすいため、可能な限りこれを「名字+俳号」に改めた。また生年を(xxxx-xxxx)として西暦書で補い、年代の把握を容易くした。時には発句の名称だけでなく、本文の文脈内に(xxxx-xxxx)を補った場合もある。これは子規の表記には存在しない。

一、また、芭蕉の発句については、角川ソフィア文庫の『芭蕉全句集』によって(文庫に掲載されている作品は)表記を改め、読みのことなるものも角川ソフィアのものを採用した。外の蕉門の発句については岩波文庫の『蕉門名家句選(上)(下)』に掲載されている作品については、表記を改め、読みもこれに従った。さらに、蕪村の句については、角川ソフィア文庫の『蕪村句集』に従って表記と読みを改めた。これは発句のもとの表記や読みの正確さが、『獺祭書屋俳話』では十分全うされていないためと、かといってすべてを調べ訂正するためには、気力も予算も時間すらも、獺祭書屋書生に与えられていないためである。

[注意]
・表記を改めた発句については、句の後ろに
   ○○○○○○○○ ・
のように「・」を付けてそれと分かるようにした。さらにネット上を徘徊して、原文の表記よりは正鵠を得たりと思う場合には、参照を明らかにせず改変した発句も数句ある。この場合「・・」を付けて、それと分かるようにした。

一、言葉の意味を記す場合や、注目すべき言葉には多く「青色表記を加え」[その言葉の意味、獺祭書屋書生のコメントを、このように[]で括り薄い緑色に]書き記した。また単語ではなく文脈の場合など、一部に「茶色表記を加え」[その意味を[]内に]記した場合もあった。もちろん[この書生のコメントは]単独で使われる場合もあるなど、獺祭書屋主人の文章でないことを表明しているに過ぎない。

一、獺祭書屋主人の後に記した『獺祭書屋俳話正誤』は、増補版『獺祭書屋俳話』に対する訂正を試みたものである。これは増補版の出版された翌年、明治29年12月28日に発表されたもので、主人の修正の希望であるから、これに従って明確に文章、文脈などを改編しうる場合にはこれを改編し、そうでない場合は『正誤』と記して、そのまま本文に組み込んだ。本文に『正誤』と書いてある以下の部分は、この『獺祭書屋俳話正誤』の内容をそのまま主人の言葉として掲載したものである。

2011/5/27

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