『俳句はかく解しかく味う』より『子規』

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高浜虚子『俳句はかく解しかく味う』より『子規』

 虚子の俳句解説書『俳句はかく解しかく味う』に居士を解説したる処ありければ、それのみ朗読したる者なり。本文は俳句のみ掲載すべし。

掲載俳句 [朗読1]

[朗読1]

旅人や馬から落す草の餅

蜂の子の蜂になること遅きかな

家主(いえぬし)の無残に伐(き)りし柳かな

木々の芽や新宅の庭とゝのはず

流れ得ざる水の淀(よど)みの椿かな

たえず人憩(いこ)ふ夏野の石一つ

夏野尽きて道山に入る人力車(じんりきしゃ)

  実方中将(さねかたちゅうじょう)の墓にて
君が墓筍(たけのこ)のびて二三間(けん)

五月雨(さみだれ)の合羽(かっぱ)つゝぱる刀かな

椎(しい)の舎(や)の主(あるじ)病みたり五月雨

病人に鯛の見舞や五月雨(さつきあめ)

門前のすぐに坂なり冬木立(ふゆこだち)

掲載俳句 朗読2

[朗読2]

口紅や四十(しじゅう)の顔も松の内

暖かな雨が降るなり枯葎(かれむぐら)

  草庵
雪の絵を春も掛けたる埃(ほこり)かな

手に満つる蜆(しじみ)うれしや友を呼ぶ

連翹(れんぎょう)や紅梅散りし庭の隅

野道行けばげん/\の束のすてゝある

  浦家先生の家に冷泉あり
庭清水藤原村の七番戸(ばんこ)

地に落ちし葵(あおい)踏み行く祭かな

梅干すや庭にしたゝる紫蘇(しそ)の汁

葭簀(よしず)して囲ふ流れや冷し瓜(ひやしうり)

鴨(かも)の子を盥(たらい)に飼ふや銭葵(ぜにあおい)

稲刈りてにぶくなりたる螽(いなご)かな

  小庭
野分(のわき)待つ萩(はぎ)の景色や花遅き

煤掃(すすはき)の埃(ほこり)しづまる葉蘭(はらん)かな

2011/8/22

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